HEATBEAT STORY 01

その情熱で、
輸入の常識を超えていけ。

トルコ産鶏肉輸入プロジェクト

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日本で食される鶏肉のなんと1/4が、外国産と言われる今日。 輸入鶏肉のうち、生鮮鶏肉と呼ばれるカテゴリーではブラジル・タイ産はそのおよそ9割を占めると言われている。例えば、スーパーに行けば、当たり前に目にするようになったブラジル産の鶏肉。この日常が当たり前になったのも、異国の地でビジネスを立ち上げた人、はるか海の彼方から日々運ぶ人など、様々な人たちによって支えられているからだ。自給率の低い日本では、これからも海外の食材を輸入していくことが必須。つまり、これまでにない新たな国との取引の可能性も探っていく必要がある。

今回紹介する、トルコ産鶏肉輸入プロジェクトもその挑戦のひとつだ。2017年9月。ちょうど鳥インフルエンザによる輸入禁止が解禁になるタイミングで声がかかった、2人の女性社員。彼女たちの活躍によって、安定的な輸入の道は切り開かれていった。

PROJECT MEMBER

  • 梅原 沙織

    2015年国際物流部の一般職として入社。SGLと出会ったときに運命の会社を見つけたと確信。しかし総合職募集は終わっており、一般職での入社を決意。「数年後、総合職に転換する」という目標を有言実行し、3年目には総合職として国際物流部の営業部隊に。

  • 尾崎 夏奈

    2016年総合職として入社。国際貿易にまつわる様々な手配や調整を担う輸入第二部に所属。顔が見えない相手にも臆せず、持ち前の計画性と責任感で、難しいと言われる食品輸入をいくつも担当。

  • 01

    食品輸入の慣習を、覆す。

    東京オリンピックなど国際的イベントを控える今。増加する訪日外国人に向けてハラル料理にも安心して使用できるハラル認証の鶏肉のニーズが高まっている。そのニーズをいち早くキャッチし、輸入先の開拓にあたっていた住友商事。輸入元として候補に上がったのが、トルコだった。住友商事とSGLがタッグを組み、トルコ産鶏肉の日本初上陸に向けプロジェクトは動きだした。選定したサプライヤー(鶏肉生産会社)との契約交渉も着々と進み、取引は順調かのように見えた。
    しかし、トルコの輸出手配の段階になって課題が発生。サプライヤーは近隣諸国への輸出経験があるが、アジア圏への出荷実績がなかったため、客先への納期管理に関して住商側が不安に感じていたのだ。食肉輸送は、業界の通例として輸出側が船積みの手配をすることがほとんどで、SGLの仕事は日本に到着後の商品の輸送となる。しかし、納期や書類の不備など問題が多々起こりうる海外取引。また生鮮品のため、衛生管理なども細心の注意が必要になる。なにより指定日に荷物を待つお客様に正確に届けるために、不慣れな手配ではリスクを伴う。そこで、SGLは輸送をまるごと引き受けるために、サプライヤーとの交渉を決意。前例のない挑戦にむけて、営業担当の梅原はその活路を探っていた。

  • 02

    梅ちゃん、トルコ行ってきなよ。

    梅原に、ある日突然ミッションが課せられた。急遽、トルコへの出張を言い渡されたのだ。輸送手配を引き取ることが実現可能かわからない状態だったため、現地でサプライヤーと直接交渉する必要があったのだ。またSGLとして、荷物を出す場所と受け取る場所には必ず責任者を置く必要があるのだが、トルコにSGLグループの拠点はない。そこで、現地のパートナー企業候補をいくつかリストアップし、実際に協業できるのか調査するための出張である。
    一般職入社後、いつかは総合職に転換したいという積年の想いを叶え、営業の仕事についた矢先の出来事。営業の仕事自体をまだやったこともない状態だ。右も左もわからない梅原が現地で交渉するために、後方支援をしたのは一年後輩の尾崎だった。SGLに物流を任せることの有用性、また、価格面でもいかにメリットのあることかなど、物流管理のプロとしての視点を盛り込んだ資料を持たせ、梅原を送り出した。

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    日本からの願いと、資料を武器に。

    幸いにも、サプライヤーの反応は悪くなかった。サプライヤーとしても慣習にならって輸送手配をしていただけで、SGLに頼むという選択肢を思いつかなかった部分もあり、尾崎のまとめた資料が大いに役立った。輸送の知見を持ったSGLが全部まるごと引き受けることで、サプライヤー側の労力も減って生産に集中できる。そんな話をする中で、担当者の顔がだんだん変わっていくのが見て取れた。
    サプライヤーが納得をしてくれれば、次は現地パートナーの選定だ。梅原がビジネスの大きさや求められていることを伝えると、ぜひやらせてほしいと前向きな反応を得ることができた。外国との取引は、文化の違いや考え方の違いにぶつかることも多いが、トルコ人は日本人に気質が近いのか、きめ細やかでしっかりと受け答えをしてくれる人が多い。そのビジネススタイルにも助けられた。

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    現地に行かない自分に、できる全力の支援。

    現地パートナーとの契約は順調に進んだが、まだ大きな問題が残っていた。まず2018年3月という初便の納期に間に合わせるために、はじめはサプライヤー選定の輸送会社での輸入がスタートしたからだ。輸入においては、日々トラブルが起きないことのほうが珍しいと尾崎は言う。天候に左右され船便が遅れるといった偶発的事態から、輸出地で発行された荷物明細と運ばれてきた中身が違っているというミスまで幅広く、届いたコンテナを受け取ってそのドアを開けるまでは一時も気が抜けない。しかも、通関という法律上の壁もあり、少しのミスがあっても日本へ荷降ろしできず、最悪荷物を持ち帰るという事態にすらなりかねないのだ。
    尾崎は、事前に空輸便で数ケースずつ輸入した結果から梱包、書類の不備など小さな気付きも含め様々なフィードバックをサプライヤーへ行っていた。その問題点を総ざらいして、あらかじめトルコへ発つ梅原に託し、成功を祈った。

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    「来週船積みするから!」と今週も。

    輸送の手配が整い始め、いよいよSGLとしての初回手配スタートとなる5月が近づいてきた。しかし、現地からは発送の連絡が来ない。梅原は、これでは間に合わないとせっつくものの「来週出荷するから!」と毎回返答があり、既に1ヶ月半が経とうとし、気を揉む毎日を送っていた。加えてサプライヤーとコミュニケーションを取るにも、輸送元を通じて連絡をせねばならない。
    催促のやり取りが重なる中、ある日梅原は輸送元の窓口担当から悩みを打ち明けられた。「今日サプライヤーからひどいことを言われたんだ。『俺たちは頑張って出荷準備をしているのに、早くしろという連絡ばかりで何なんだ』って」。みんなそれぞれの立場で頑張っているだけなのに、どうしてこうなってしまうのか。その夜、梅原は歯がゆさに、一人涙した。

  • 06

    普通に荷物が届くこと自体が、奇跡。

    初便は1ヶ月遅れでの到着。それからも様々な調整を経て、なんとか開拓した自社輸送の仕組みが形となり、ついにSGLが手配した荷物の第一号が日本に運ばれてきた2018年8月。その初荷のコンテナが港に着き、荷下ろしされた現場に、梅原と尾崎の姿があった。毎日予測もできないような大変なことも起きるが、やはり荷物が無事届いたときの喜びは格別だという。コンテナの扉が開かれる瞬間を捉えようと、カメラを手にもつ2人。ギギギと音を立てて開いた扉の向こうにあったのは、なんと荷崩れした荷物であった。「ああ、またフィードバック資料つくらなきゃ」と頭を抱えながらも、「ま、あとは早く食べたいよね」と笑いあった。
    私たちが毎日普通に暮らせている幸せを意識する瞬間は少ないだろう。しかし、荷物が時間どおりに普通に届いていることは奇跡的なことなのである。トルコとのやり取りは始まったばかり。これからも目の前に起こる問題と向き合い続けていかなければいけないと2人は言う。彼女たちの情熱によって形になったトルコ産鶏肉輸入プロジェクト。その挑戦は、これからも続いていく。